大川成一のボランティア活動

荒川区職員が理髪ボランティア

1995年(平成7年)2月25日(土曜日)
毎日新聞より


 20年ぶりに握ったバリカンが、被災者の髪を小気味よく刈り込んでいく。
 阪神大震災の被災地をボランティアで訪れた荒川区税務課職員、大川成一さん(42)が理容師の資格を生かし、1週間避難所で「無料理髪店」を開いた。
 頭の手入れどころではなかったお年寄りはさっぱりした表情。後ろ髪引かれる思いで帰郷した大川さんは、休日を返上してもう一度、被災地を回ろうとしている。区のボランティア研修制度を活用し、15人の区職員がこれまでに現地入りし、障害者の生活援助、炊き出し、物資の仕分けなどに取り組んでいる。
頭を切って3日に出発した区心身障害者福祉センターの保母、和合譲子さん(43)の紹介で、大川さんは兵庫県西宮市の「すばる福祉会」のボランティアに参加する。大川さんの実家は、同区南千住八の理髪店を経営している。20歳の時、大川さんは理容師の資格を取得し、中央区などの理髪店で約1年間修行をしていたが、シャンプーによる手の荒れがひどかったことから後継ぎを断念。1974年に区役所に入った。11日に西宮入りした大川さんは「役立つことがあれば」と、実家からハサミ3丁、カミソリ2丁、バリカン1つ等を借り、ボストンバックで持参。福祉会側の要請を受け、避難所とお年寄り方を回ることになった。ポットのお湯と、水のいらないドライシャンプーを使い18人に散髪、洗髪をした。散髪とマッサージをした八十代の夫婦は「一生忘れない」。数週間ぶりに髪を洗う人も多く、久しぶりの爽快感を味わうお年寄りらの顔が忘れられない。
 「すでに理髪店の営業も始まりつつあるが、外へ出るのがつらいお年寄りはまだいる」と、休暇や土日を使って、来月にも再び理髪ボランティアをしたい考えだ。



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